キャリアの物語をつむぐ

働きかた編集者 山中康司のブログ

人はなぜ働くのか①-橘木 俊詔「人にとって『働く』とはどういうことか」-

本屋にいくと、「なぜ働くのか」に関する本がたくさんある。それだけ、「なぜ働くのか」というテーマはみんなの関心ごとになっているんだろう。

 

この「なぜ働くのか」という問いは、現代の日本でだけ問われているわけでは、もちろんない。それこそ古代ギリシアの時代から問われていて、時代や文化とともに、その問いに対する答えは変わってきたみたいだ。

 

例えば、今は「働くことは生きることだ」という考え方が広く受け入れられているような気がするけれど、「働くとか、しなきゃしない方がいいよね」という考え方が一般的だった時代と場所もある。

 

そういった多様な労働観を知っておくことは、現代の労働観を相対化できることにもつながる。だから今日は、橘木俊詔編著『働くことの意味』(ミネルヴァ書房)のうち、古今東西の労働観を紹介した「人にとって『働く』とはどういうことか」から、さまざまな労働観をピックアップしてみる。


労働は呪いである(古代ギリシアの労働観)

古代ギリシアでは、労働は奴隷や戦争に負けた国の人がするもので、呪われたものであるとみなされていたという。そうした労働する人々と市民は区別され、市民は労働従事者がつくる農作物や手工業製品に支えられながら暮らしていた。

 

アリストテレスも、「労働から解放された人間だけか思索の自由を得ることができる」と、こうした区別をみとめていた。


労働は尊い行いである(中世キリスト教的労働観)

生きていくために働くことは尊いことだと唱えたのは、中世のキリスト教神学者たちだ。中世のキリスト教の狭義には、禁欲の教えがあったため、労働をして自分の生活に必要なものを得ることを尊いことだとした。

 

たとえば、6世紀の修道院では農作物や工業製品を自給自足していた。このことが一般の人にも広がっていくことになる。12.13世紀になると職業のなかに貴賎の差が生まれたり、14-17世紀になると外国との貿易が盛んになることで富裕層が生まれることになる。

 

さらに、16世紀の宗教改革で生まれたプロテスタントの教義では、勤勉さと倹約が美徳とされ、働かないことは罪とみなされた。


労働は尊い行いであり、利益を上げる行いである(近現代的労働観)


17.18世紀の市民革命によって、絶対君主にかわり市民が支配階級となり、さらに18世紀後半の産業革命によって、そのなかから資本家が登場した。つまり、資本家と労働者という区別が生まれ、資本家にとっては利益を上げるため「労働者にいかに働いてもらうか」が考えるべきことになった。

 

マックス・ウェーバーが「プロ倫」で述べているように、それ可能にしたのが、プロテスタンティズムの勤勉倹約の倫理だった。つまり労働者自身も勤勉に労働に励み、倹約をすることで神の恩寵を得られると考えたため、頑張って働いてほしい資本家の考えと利害関係が一致したのだ。

 

労働は美を生み出す行為である(ラスキン・モリスの労働観)

職人芸の立場から、労働を喜びとした労働観もある。それが、ウィリアム・モリスやジョン・ラスキンの考え方だ。モリスは、自分の才能が発揮できるような仕事に就いて製品を生み出すことが、労働の喜びにつながると考え、職人芸を賛美した。また、ラスキンは、労働を知性の発露の場とみなした。

 

労働は生産することであり、生産することは人間の本質である(マルクス主義的労働観)

また、マルクスは、労働は自己の個性と能力を発揮して自然に働きかけて生産物を作り出す、やりがいに満ちた活動であると考えた。しかし、資本主義によって資本家と労働者という階級ができ、労働者はそうした人間の本質たる労働から疎外されてしまっていると指摘した。


労働は自らの意思で他者に役立つ行為である(仏教的労働観)

ここまで西洋の考え方をあげてきたが、「人にとって『働く』とはどういうことか」では東洋の労働観も取り上げられている。たとえば日本における仏教的な労働観では、働くことは誰にも強制されることなく、自発的に他人に役立つことだと考えられてきた。

 

これは「はたらく」の語源が「傍(はた)を楽にする」だ(諸説あり)ということにもつながってくるかも知れない。

 

 

まとめ

労働観については、ここで紹介した以外にもたくさんある。が、少なくとも言えるのは、宗教と労働は密接に関わっている、ということだ。宗教は労働に意味を与えてきたのだ。

 

しかし現代ではフランスの哲学者ジャン=フランソワ・リオタールが「大きな物語の終焉」という言葉で指摘したように、社会全体で共有されるような価値観の力が弱まり、一人ひとりが自分の物語をもつことが必要になってきている。

 

そうしたなかで、労働観についても、「自分はなぜ働くのか」を自分自身で考える必要があるようになってきている。それを大変だと考えるか、自分のキャリアをデザインできる楽しい時代だと考えるかは、人それぞれだけれど。

 

参考文献


橘木 俊詔「人にとって『働く』とはどういうことか」『働くことの意味』ミネルヴァ書房

NPOに転職することのメリット・デメリットと、仕事の探し方

NPOで働くことに興味があるんです」という声を聞くことは少なくない。

 

僕がNPOに転職した時には、親から「なんで大学まで出てボランティアみたいな仕事をするんだ」と止められた。そのことを考えると、今の若い世代はだんだんと、NPOのようなソーシャルセクターで働くことに対する誤解とかネガティブな印象はなくなりつつあるのかもしれない。

 

一方で、「NPOで働くことに興味があるんです」の次に続く言葉は、「どうやって食べていけばいいですか?」だったりする。やっぱり、NPOは稼げないという印象は根強い。

 

じゃあ、実際にはどうなんだろう? ということで、お金の話も含めて、NPOで働くことのメリット・デメリットをまとめてみた。

 

NPOのお給料の話

さて、気になるお金の話。NPOなどで構成される新公益連盟が17年に実施した『ソーシャルセクター組織実態調査2017』と、加盟団体の平均年収は383万円。

(参考:ソーシャルセクターの給与・働き方・キャリアとは? ~新公益連盟ソーシャルセクター組織実態調査2017より~ | DRIVE - ツクルゼ、ミライ!行動系ウェブマガジン

 

おや、意外と高いな、と思ったのはぼくだけじゃないはずだ。

 

NPO全体での平均は200万円台半ばとされ、どこでもこれほどの給与があるわけじゃない。要するにピンキリですよね、というところだけれども、「NPO=食べていけない」というわけじゃないことは言えるだろう。

 

特に、日本全体の労働市場が空前の売り手市場である今、ソーシャルセクター も人材確保が大きな課題になっている。日経新聞によれば、大手転職サイトへの求人掲載数は過去3年間で3倍以上になったという。そうした中で、大規模なNPOは賃上げによって優秀な人材を仲間に入れる動きが進んでいる。

(参考:NPOも人手不足 求人数3倍超に、年収上げ人材確保 :日本経済新聞

 

 

メリット

さて、「ピンキリかもしれないけど、稼げるところではある程度稼げる」ことがわかったところで、僕が考えるNPOで働くことのメリットとデメリットをあげてみる。(あくまでも主観です)

 

まずはメリットから。

 

  • 自分のスキルを活かして社会課題を解決できるやりがい

現状、NPOで働くとめちゃくちゃ稼げる、というわけではない中で、NPOで働くことで得られる大きなものは、やはりやりがいだ。「お金をガツガツ稼ぐよりも、地域や社会のために役立つことをしたい」というタイプの方は、やりがいを感じながら働くことができる。

 

ちなみに僕がNPOに転職して感じたのは、日常会話や会議の中でも、前提になっていることが営利企業と異なること。営利企業だとどうしても「利益をどう上げるか」が前提となって話すけど、NPOだと「社会にどうインパクトを与えるか」を前提に毎日の話がなされていた。

 

もちろんNPOにとっても利益を上げることは大事なのだけど、何を目的とし、何を手段にしているのかが異なるのだ。利益ではなく社会へのインパクトを目的に話ができる環境は、僕にとって心地よかった。

 

  • 無形資産としての人的ネットワークを築ける

『LIFESHIFT』や『お金2.0』でも述べられているように、人との繋がり、人的ネットワークは、個人にとってとても貴重な無形資産になる。

 

その点NPOは、人的ネットワークを築きやすい印象がある。取り組みが共感を生みやすいからだ。一方で、そのネットワークが内輪、つまりNPO界隈だけのものになってしまわないように注意は必要かもしれない。

 

  • 多様な働き方が可能

『ソーシャルセクター組織実態調査2017』によると、NPOは多様な働き方を可能にする制度が、営利企業に比べて整っているという。

 

「在宅勤務を含むリモートワーク」を導入しているのは、一般企業が11%であるのに比して、NPOは64%「雇用形態の一時的な移行」および「週の出勤日の短縮」の施策の導入もそれぞれ48%、「ワークシェアリング」の導入も24%の組織が取り組んでいるという。

(参考:ソーシャルセクターの給与・働き方・キャリアとは? ~新公益連盟ソーシャルセクター組織実態調査2017より~ | DRIVE - ツクルゼ、ミライ!行動系ウェブマガジン)

 

繰り返しになるけれど、あくまでもこの調査に回答した組織の結果なのでこれをもって「NPOはこうだ」とはいいにくいが、それでも僕の実感としても、確かに柔軟な働き方は認められているように思う。

 

  • 独り立ちしやすい

これは、NPOだからというより、組織規模の問題なのかもしれない。多くのベンチャーにみられるように、規模がまだ大きくないNPOでは、入ってすぐに権限をもって仕事を任される。だから、早くから経験を積むことができ、スキルが身につきやすい。

 

一方で、基本OJTで、しっかりした研修があるわけではないところが多いから、「ちゃんと教えて欲しい」という方には難しい環境のNPOは多いかもしれない。

 

デメリット

 

一方のデメリットはというと、次のようなもの。

 

  • 福利厚生や給与水準は低め

NPOの給与は思ったよりも低くない…ところもあるものの、やはり営利企業、特に大企業と比べれば多くの組織が低いのが実際だろう。それに、社会保険も最低限しか整っておらず、福利厚生もあまりないところが多い。

 

  • やりがい搾取のような状況に陥りがち

この問題は非常に難しい。やりがい搾取とは、

 

労働者が、金銭による報酬の代わりに“やりがい”という報酬を強く意識させられることで、賃金抑制が常態化したり、無償の長時間労働が奨励されたりする働きすぎの組織風土に取り込まれ、自覚のないまま労働を搾取されている状態」(引用:「やりがい搾取」とは? - 『日本の人事部』

 

ということ。どうしても、賃金よりもやりがいを求めてジョインすることが多いので、賃金抑制や長時間労働、働きすぎの状態には陥りやすい印象がある。マネジメント側も個人も「やりたくてやってるんだからいいだろう」という考えになりがちだが、それで心身ともに疲弊しているNPO職員は少なくない。

 

  • ビジネスの常識が通用しないことがある

現状、ビジネス領域からソーシャル領域への人材移動はそれほど活発ではないので、NPOでもビジネスの常識が通用しないことがある。マーケティングやデザイン、テクノロジー、マネジメントといった分野で、ビジネス領域で経験を積んだ人材はNPOでもとても求められているが、組織によっては「入ってみたら、話が通じなかった…」ということも起こりうるだろう。

 

だからこそ、ビジネススキルを活かして組織内でイノベーションを起こせる可能性も高いのだけれど。

 

  • 転職後のリアリティショックが起こりがち

リアリティショックとは、「入ってみたら、思っていたのと違った…」という、転職や就職の時によくあるショックのこと。NPOは理念に共感して、夢を持ってジョインする人が多い一方で、実務は結構地味だったりする。その理想と現実のギャップにショックを受ける人は少なくないだろう。

 

  • 周囲の理解がないことがある

僕の親じゃないけれど、「NPOはボランティアなんだろう」と思っている人はまだまだいる。友達とか知り合いとか、ソーシャル領域以外の方と話すと、まず「いや、NPOはですね…」というところから始めなきゃいけない場合もあるので、しんどいといえばしんどい。

 

あと、単純に合コンとかでモテなくなる、ということもあるかもしれない。(僕は全然行かないけど)

 

必ずしも転職しなくてもいい

 

NPOに転職することのメリット・デメリットをざっと挙げてみた。

 

最後に、そもそもだけど、NPOに転職することを考えている方は、「そもそも転職すべきなのか?」を立ち止まって考えてみてもいいと思う。

 

必ずしも、正規スタッフとしてジョインするというカタチでなくともNPOに関われる選択肢はある。プロボノや、社会人インターン、副業(複業)、あるいは自分で立ち上げる、今の組織の中でCSRなどでNPOとコラボする、など。

 

収入や福利厚生が気になるという方は、まずはプロボノや副業で関わるというのもアリ。ぜひ、自分なりのNPOとの関わり方を見つけてみてください!

 

 

「LIFESHIFT×旅」第2回開催しました

旅とは人生であり、人生とは旅である。

 

なんてのは使い古された言葉で、言うのも面映ゆいですが、人生100年時代に突入する今後は、キャリアをつくっていくために「旅」がこれまで以上にいいきっかけを与えてくれるはず。 やっぱ旅とは人生だ!

 

なんて、『LIFESHIFT』をはじめて読んだ時に一人興奮していたのですが、仕事旅行社さんとかキャリアを考える大人のデンマーク旅【Kompas】とか東洋経済新報社さんとかHISさんとか、いろんなご縁をいただきまして、あれよあれよというまに「LIFESHIFTおじさん」を襲名し(自称説もあり)、「LIFESHIFT×旅」第2回を開催しちゃってました。(ほんと人生って不思議。)

 

lifeshifttabiomotesando.peatix.com

 

 

ちなみに僕は、企画・ファシリテーションを主に担当。

 

今回のゲストは、リクルートを退社後家族4人で約8ヶ月に渡り世界30カ国を放浪した佐藤邦彦さん、商社にて5年間勤務したのち世界15カ国から来た100人の若者と世界を回った湯田舞さん、『LIFESHIFT』を刊行している東洋経済新報社の荒木千衣さん。

 

f:id:kjymnk:20180308213011j:plain

 

みなさんお話がめちゃくちゃ面白く、名言出まくり。「旅は自分のOSをアップデートしてくれる」「対話が旅を通してキャリアをつくる鍵になる」「リスクは情報取集をしっかりした上でとるべし」など、ファシリテーションそっちのけで聴き入っちゃいました。やっぱり旅とLIFESHIFTはめちゃくちゃ親和性あるわ。旅出たいわー!という思いを強くした3時間でした。会場を貸してくださったHISさんなど、関係者の皆様にも本当に感謝!

 

「LIFESHIFT×旅」、立ち見も出るなど大好評なので、たぶんまたやります。(チケットが取れず来れなかった方、ごめんなさい!)今度は国内を旅した方をお呼びしてもいいかなーなんて。

 

ぜひお楽しみに◎

 

f:id:kjymnk:20180308213029j:plain

“もう、働き方の話はやめよう”。ぼくたちが「生き方見本市U30」を3月11日に開催する理由

3月11日に、生き方見本市U30を開催します。これまで働き方見本市として開催してきた本イベントを、なぜリニューアルすることにしたのか。運営メンバーの思いを少しご紹介します。

 

7年前の3月11日を契機に、人々の価値観は大きく変わりました。それまでは、どれだけ多くのお金を稼ぐか、つまり「働き方」が多くの人にとっての関心ごとでしたが、未曾有の震災を経験して以降、自身のライフスタイル・生き方・考え方といったこと、つまり「生き方」を重要視する価値観が広がってきています。

 

特に今25歳から30歳の、U30(30歳以下)の世代は、「生き方」を志向する世代。バブルを経験しておらず、就活をするころにリーマンショック、そして東日本大震災を経験したことで、「働き方」よりも「生き方」を大切にするという価値観を持っています。

 

一方で、昨今は「働き方」の議論が盛んです。しかし、長時間労働の是正や賃金格差の解消といった方法論の議論だけでは、「働き方改革」は一人ひとりにまで広がらず、一過性のブームに終わってしまいます。

 

いま、本当に話されるべきなのは、一人ひとりがどのような価値観を持ち、どう生きるかという「生き方」の話なのではないか。そしてU30こそ、「働き方」から「生き方」へ、という転換をリードできる存在なのではないか。

 

ぼくたちはそのように考え、2017年4月から3回に渡り開催してきた「働き方見本市U30」を「生き方見本市U30」にリニューアルし、私たちの価値観が変わるきっかけになった3月11日という日に開催することに決定いたしました。

 

イベントの見所

「生き方見本市U30」は一般社団法人八八 が開催する、30歳以下を主なターゲットに、ゲストの多様な生き方を通してキャリアを考えるトーク&交流イベントです。

  

これからの生き方を実践する約18名のゲストが3(13:00-/15:30-/18:30-)に分かれて出演します。ゲストはピッチトーク(活動紹介)の後に、それぞれのブースを構え、参加者と共に生き方やキャリアについて語り合う、双方向型のイベントです。

 

f:id:kjymnk:20180303140738j:plain

 

f:id:kjymnk:20180303140823j:plain

 

f:id:kjymnk:20180303140807j:plain

 

 

キャリアについて悩んでいる方、ロールモデルとなる人を見つけたい方、生き方について語りたい方は、、ぜひご参加ください。お申し込みは、以下のページから。皆さんのご参加、お待ちしています!

ikikata-mihonichi-01.peatix.com

 

 

開催概要

主催: 一般社団法人八八
日時:2018年3月11日(日)13:00-20:00

会場: 渋谷ヒカリエ 8/ COURT

〒150-8510 東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ 8F
参加費:第1部2000円、第2部2000円、第3部2000円、通しチケット3500円
参加申込:

http://ikikata-mihonichi-01.peatix.com

参加人数:計150名(各部50名定員)

「アスリート」は肩書きではない-『SHOE DOG』フィル・ナイト-

「アスリート」は、”肩書き”じゃなくて、”あり方”なんじゃないか。

 

なにかのスポーツの分野で、時には勝ったり、時には負けたりしながら、ある目標に向かって淡々と努力を積み重ねることの、くるしさとともにある恍惚感。

 

あの気持ちを一度味わっちゃうと、「またあの感覚を味わえたら…」っていう感情が抑えられなくなちゃいますよね?(わかる人にはわかるはず)

 

社会人になると部活をしていた頃のようにスポーツに時間をかけれることはないけれど、日々の仕事でも、「いいか、これはスポーツなんだぜ」って自分に言い聞かせると、地味な仕事もがんばれる、ってことに最近気付いた。

 

羽生結弦大谷翔平にはなれないけど、アスリートのあり方で仕事にのぞむのだ。

 

そんなことを思っていた時に、たまたまいただいた『SHOE DOG』では、まさに「アスリート」のメンタリティで世界一のスポーツブランドを築いた男の姿が描かれていて、「うわーそれそれ!それですよ!ナイキの靴買いますわ、ぼく!」って興奮してしまった。

 

フィル・ナイトさんもあの気持ちを持ち続けてた人なのだ。

 

おっさんになってもじじぃになっても、「アスリート」でありたい、って心底思わされる一冊。何かスポーツに夢中になった経験がある方は、おすすめです!

 

 

「ティール組織」から考える、組織における”DOの肩書き・BEの肩書き”

変化が激しいVUCAの時代には、個人も組織も「DO(何をするか)」よりも「BE(どうあるか)」を考えることが大切になっている。「BE」がしっかりしていれば、変化にも柔軟に対応していけるのだ。

 

個人のキャリアにおける「BE」は、兼松佳宏さんが考え方と実践の場をつくっている。

(参考:DOとしての肩書き、BEとしての肩書き | greenz.jp | ほしい未来は、つくろう。)

 

そして、組織においても「BE」が重要であることを指摘しているのが、今話題の「ティール組織」というパラダイムだ。

 

「ティール組織」とは

 

「ティール組織」とは、『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』で示された、新しいマネジメントのパラダイムのこと。

 

そのパラダイムについてはhome’s vi代表理事である嘉村賢州さんの整理がわかりやすい。

 

パラダイム
世の中の物差しや価値観から帰納して組織の存在を定義。将来の見通しを立てて、経営戦略に落とし込む。他社と比較してポジショニングをし、市場を取りにいく、という発想。KPIのような科学的測定や評価・分類によって評価する。


パラダイム(ティール)
組織に属するメンバーひとり一人がどのようなギフトをもっているのか、どうありたいか、組織メンバーの能力や想いを演繹して組織の存在を定義。将来への方向性はあるが、固定されたビジョンやミッションを持たない。進化する目的を探求する中で組織としてのアウトプットが浮かび上がってくる。外的物差しで評価しない。

(引用:ティール組織に取り組む前に知っておきたい、3つの誤解 – 嘉村賢州 – Medium

 

つまり、外部環境をもとに設定された目標を達成するために、メンバーを役割に当てはめて管理していく、帰納的なマネジメントのあり方ではなく、メンバー一人ひとりの自律を前提とし、柔軟に変化していけるような、演繹的なマネジメントのパラダイムのこと。

 

外発的動機づけにもとづくマネジメントに対して、内発的動機づけにもとづくマネジメントのあり方、とも言えるかもしれない。

 

ティール組織については、次の記事にも詳しくまとめられている。

 

mirai.doda.jp

 

ぼくなりにざっくり要点をまとめると、

 

・目標の達成を目指す「達成型組織」は、高い成果を残す一方で、メンバーを疲弊させる

・疲弊の要因は、

(1)組織が生き残るために働かなければならない、という恐れがあること

(2)上下関係による管理コストと恐れがあること

(3)自分の全人格のうち、目標達成に必要な部分しか会社で発揮できないここと

による。

・「達成型組織」に対して「ティール組織」は、個人の自律を前提とした組織のあり方

・特徴としては、

(1)目標ではなく、存在目的を意識すること

(2)上意下達ではなく、助言をベースにした自主経営を行うこと

(3)メンバーは個人の全体性を仕事に持ち込めること

がある。

・これらの特徴があることで、メンバーが自律性を発揮することができる。

 

ということだ。

 

ソーシャルセクターにおけるティール組織

 

ぼくの関心領域である「ソーシャルキャリア」に関連づけて考えると、ソーシャルセクターの組織は、ある社会課題の解決をミッションに掲げていることが多い。そうすると、どうしても「達成型組織」になってしまい、メンバーが疲弊していた…ということになりかねない。(いわゆる「やりがい搾取」)

 

ソーシャルな領域でキャリアを歩みたいと思ったらとくに、その組織の「BE」、つまり存在目的に注目してみるのも大切だ。

 

その組織が、どうありたいと考えているのか。それが、メンバーにまで浸透しているのか。そして、メンバーが自律的に働けているのか…。

 

そういったこと基準に、働く場所を選んでみるのだ。

 

思いを持った個人が、その思いがあるあまりに組織で疲弊してしまうのは悲しいことだし、社会にとっても大きな痛手。個人が思いを思いとして大事に育てていける組織は、結果的にメンバーだれもが力を発揮し、より良い未来の実現につながるんじゃないかな。

 

 

 

 

「NPO=ボランティアだろ?」という親に伝えてあげたい、「NPOも稼いでいいんです」ということ

フローレンスの駒崎さんがブログで紹介した、参議院予算委員会での論戦が話題になっている。

 

www.komazaki.net

 

詳しくは駒崎さんのブログを読んで欲しいのだけど、ざっくりいうと、公明党の山本香苗議員がものづくり補助金の対象からNPOなどの非営利活動法人が除外されていることについて質問し、それに対して経済産業大臣である世耕弘成が回答。

 

初めは官僚が書いたものを答弁していたものの、途中から世耕大臣自身の言葉で語りだす。

 

NPOとかは、これだと収益力向上を図らないのか、経常利益や付加価値額のアップを図らないのかと誤解をされるんですが、当然私は、NPOはよく誤解をされますが、利益を上げていいわけです。」

 

と、NPOに対するよくある「稼いじゃダメなんでしょ」という誤解に、「稼いでもいいんですよ」と反論したうえで、ものづくり補助金の対象に非営利法人も含むことを「検討する」と前向きな姿勢を示したことで、ソーシャルセクター界隈では「よくぞいってくれた!」と喝采が起きている。

 

根強い「NPO=稼げない」イメージ

 

NPOをはじめ、非営利法人についてまわるのは、「稼いじゃダメなんでしょ」という誤解。ぼくもNPOに転職すると親に伝えた時、「なんでボランティアなんかやるんだ」と言われたのを思い出す。

 

世代によると思うのだけれど、ぼくの親世代は「NPOサヨクのボランティア」みたいなイメージがあるのかもしれない。ぼくの同世代なんかは、そこまで極端な誤解はないものの、「NPO=稼げない」というイメージはやはり多くの人が持っている気がする。

 

実際に、ソーシャルセクターに興味がある学生によく聞かれるのが、「NPOで食べて行けますか?」ということだったりする。

 

ソーシャルセクターの平均年収は低い…わけでもない

 

じゃあ実際のところどうなのかというと、「ピンキリじゃないか」と思ってる。

 

NPO社会的企業などで構成される新公益連盟の調査によると、ソーシャルセクターの平均年収は339万円で、一般中小企業では292万円を上回っているそうだ。

(参考:ソーシャルセクターの給与・働き方・キャリアとは? ~新公益連盟ソーシャルセクター組織実態調査2017より~ | DRIVE - ツクルゼ、ミライ!行動系ウェブマガジン))

 

調査対象となったNPOは一部なので、この結果を持って「NPOは稼げるんだ!」とは言えない。けれど、「なかには普通に稼げるところもあるんだ」ということは言えるはずだ。実際、ぼくはNPOに転職したら、ベンチャーに勤めていた時よりも年収は上がった。

 

それは、大企業ほどの高収入とは行かないまでも、「食べていける」NPOはちゃんとあるのだ。

 

今後さらに高年収のNPO職員も生まれる?

 

昨年行われた「DODAソーシャルキャリアフォーラム2017」で、認定NPO法人日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆氏が、「これからNPO全体で給料が高いとこも出てくるのでは。高いところは、民間平均500万、大企業平均700万の間の、年収600万くらいを目指すべきじゃないか」ということを語っていた。

ファンドレイジングがうまくいけば、それくらいの年収になることも可能だ。

 

ぼくの親にも、山本香苗議員や世耕弘成大臣の議論や鵜尾雅隆氏の話を聞かせてあげたいのだけれど。なかなかこういう情報って、ニュースにならないんだよなぁ。