働きかたを編集する

働きかた編集者 山中康司の備忘録

夢がなくても幸せになれる?-『夢があふれる社会に希望はあるか』児美川孝一郎-

ちょっと前の話ですが、結構メディアにもとりあげられている、ある分野でプロフェッショナルといっていいような方の口から、「まぁ、私もやりたいことなんて特にないですからね」という言葉がでたのでびっくりしたことがありました。

 

若くてなにもキャリアを積んでいない人がいうのなら、驚くこともないのだけれど、社会的な評価も高くて、これまで輝かしい実績も上げてきている方でも、「やりたいことが特にない」、というのがすごく意外で。

 

ただ、文脈を抜きに「やりたいことなんて特にないですからね」と聞くと、なんだかネガティブにしか聞こえないですが、その時はネガティブなひびきはなかった。(文脈を忘れてしまったのが残念ですが。)むしろ、もっとポジティブで大切な含みをその言葉に込めているように感じました。

 

これは僕の想像ですが、その方が言ったやりたいことが特にない」というのは、いわゆる”夢”や”ビジョン”といった大それたものは特段もっていないですよ、ということなんじゃないかな。”夢”や”ビジョン”は持っていないけど、もっと短いスパンで小さな規模のやりたいことはあって、そうしたことの積み重ねで今があるんですよ、ということが言いたかったんじゃないか、と思っています。

 

”夢”にかんして、最近読んだのが『夢があふれる社会に希望はあるか』という本。書いたのは法政大学キャリアデザイン学部の児美川孝一郎教授です。

 

 

児美川教授は、いまは「夢をあおる社会」だと言います。メディアでは、夢を実現した経営者やスポーツ選手のストーリーがとてもかっこよく描き出され、教育現場でも「将来の夢はなにか」と繰り返し問われる。僕も『プロフェッショナル 仕事の流儀』を見て、「自分もいつかプロフェッショナルになりたい!」と思っていたことがあります。

 

でも、実際に本田圭佑さんみたいになれるひとはひと握りなのだから、「本田さんは夢に向かって一直線に進んでいるのに、僕ときたらブログも続きやしない」なんて自分を責めることはないのです。(いや、それはちょっと違うか。)

 

なにせ、夢を実現した人は2割くらいしかいないそうなんですね。のこりの1割くらいの人は、夢を実現できなかったり、夢の仕事に就けてもやめてしまっていたりする。じゃあそのひとたちが不幸かというと、そんなことない。めぐりあった仕事で、意外な楽しみを見つけて幸せに生きていたりします。

 

児美川教授が本の中で言っているように、”夢”というのはマジックワードで、人のモチベーションを高めることもあれば、限られた選択肢に縛り付けたり、「夢を持たなきゃ」というプレッシャーとして僕たちにのしかかることもあります。

 

だから、かならずしも”夢”を持てなくても、焦ったり自分を責めたりする必要はないんですよね。ましてや、「”夢”を持て!」って誰かに押し付けられるものでもない。「私もやりたいことなんて特にないですからね」と言った方は、誰にこうしろと言われるでもなく、自分の人生を生きていて、幸せそうに僕には見えました。

 

今回ご紹介した『夢があふれる社会に希望はあるか』の中では、夢との付き合い方の述べられています。夢とキャリアの関係に興味がある方は、ぜひ手に取ってみてください。