働きかたを編集する

働きかた編集者 山中康司の備忘録

生産性の向上は働く喜びにつながるのか

「働き方改革では、生産性の向上が目指されている。でも、はたしてそれは個人の働く喜びにつながるのか。

 

先日参加したイベント「経産省若手官僚×企業人事『HR発イノベーション創出のための対話 ~悩む人事 不安な個人 立ちすくむ国家~』」。そのなかで、登壇者の経済産業省藤岡雅美から、こんな問いが投げかけられました。

 

いやぁ、本当それですよ。ずっと感じていた違和感を言葉にしてもらえた気がして、すごく共感しちゃって。「生産性の向上は働く喜びにつながるのか」っていう問いについて、イベント後の電車のなかでもんもんと考えてました。

 

生産性と働く喜びのジレンマ

 
「一億層活躍社会」というお題目のもと、長時間労働の是正や同一労働同一賃金によって誰もが働けるような社会を実現することと並んで、”生産性の向上”が目指されています。
 
これからどうしたって人口が減っていく(2030年には人口の約1/3が65歳以上の高齢者になる見込み)なかで、少ない働き手でもきちんと成果を上げていけるようにしていきましょうよ、ってこと。そのために、「どんどんAIを活用したり、付加価値を生み出せる人材に投資したりしてこう」という話をよく聞きますね。
 
でも、それは経営側・国側の論理だよなぁって、ちょっと違和感を感じちゃったりします。(僕、もともと「こうしなさい」って言われると生理的に「やだ!」って思っちゃうフシがあるんです。だからかな?)
 
時間や職能ではなく成果で評価されるようになって、残業規制があるなかで求められる成果を発揮する、というのはなかなかにシビアな世界な気もします。なんというか「生産性を上げたら、僕は幸せになれるのか?」みたいに、首を傾げたくなるところがあるんですよね。
 

自律性がキーワード

 
経産省の藤岡さんは問いを投げかけるだけじゃなく、大事なヒントもくれました。「鍵は自分で決められること」という言葉です。
 
たしかにそうかもしれません。自分のことを省みてみても、「やれ」と言われたら「やだ!」となるけど、なにか自分で決めたことを、好きな時間に、好きな場所でできるときは、のびのびと仕事ができている気がする。(「やっちゃダメ!」と言われると「やる!」となるんですが、これは今日の話とあまり関係ないですね。ひねくれてるだけです。)
 
そこで、改めて注目してみたいのが、ダニエル・ピンクの『モチベーション3.0』です。そのなかで、自分の人生を自ら導きたいという欲求」である”自律性”が、正解がないなかで創意工夫をしていく現代の仕事に必要な「モチベーション3.0」を上げるために、とても大切だということが指摘されています。
 
この”自律性”が、生産性と働く喜びのジレンマを解消する鍵かもしれない、と思うのです。
 
自分がやるタスクや、取り組む場所、時間、仲間を決めることができる自由が比較的担保されていると、個人としてはモチベーションが上がり、幸福感を持って仕事に取り組むことができる。結果的に、生産性は上がる。利益が上がって、経営者も嬉しい。税収が上がって、国も嬉しい。だから、マネジメント側がすべきことは個人の自律性を発揮してもらうことなんじゃないか、なーんて。
 

自律性を発揮した結果、生産性が上がるのがいいのでは

 

たぶん、ことはそう簡単には運ばないはずですよね。そもそも「モチベーション3.0」は、正解がないなかで創意工夫をしていくような仕事に当てはまるものらしいです。ルーティンワークのような仕事には、アメとムチ的な、報酬と罰を与えることがモチベーションになると。だから職種によっては、自律性はモチベーションにつながらないことがあるかもしれません。

 

けれど大事なのは、働き方改革を働かせ方改革にしないこと。これからの働き方を考えるときに、経営側・行政側の視点だけじゃなく、働く個人側がどうしたら幸福に働けるか、という視点を持ち込むことは欠かせないはずです。

 

その意味では、”自律性”はやはり、個人と会社、行政がWin-Winになるための一つのキーワードなんじゃないでしょうか。ひたすらに生産性を上げさせるのではなく、自律性を発揮できるような土壌を作ることで、結果的に生産性が上がる。っていう順番がいいなぁ。みなさんはどう思いますか?