キャリアの物語をつむぐ

働きかた編集者 山中康司のブログ

しあわせは、いつも4つの心が決める?-『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』前野隆司-

「しあわせは、いつも自分の心が決める」

 

と、相田みつをさんの詩にあります。いい言葉ですねぇ。ほんとうにそうだと思います。

 

でも人間ってのは(というか僕という人間は)欲張りで、「じゃあ、どんな心だったら幸せなのさ」ということが気になってくる。そんなときに出会ったのが、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授である前野隆司の『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』です。

 

 

幸せの4つの因子

 

前野さんによると、幸せには2種類あります。

 

ひとつが、人と比較することで得られる「地位財」で満たされるもの。物欲、金銭欲、名誉欲などですね。現在の世の中では、この地位財が幸せの要因だと思われがち。でも実は、地位財で得られる幸福は長続きしないのだそうです。

 

確かに言われてみれば、ちょっと年収が上がっていい部屋に住み始めて、最初はウキウキしていたのに何ヶ月かするうちにすっかり慣れてしまった……みたいな経験、あるあるですよね。「地位財」によって幸せになろうとする限り、限りなく年収をあげたり、ステータスをあげたりしなくてはいけないのです。そんな人生がダメだとは言わないけれど、僕は疲れちゃうなぁ。

 

もうひとつの幸せが、「非地位財」で満たされるもの。こちらは人との比較ではなく、自分の心にもとづいています。こちらの幸せは、客観的に計りづらいためなかなか注目されないのですが、地位財による幸せに比べて長続きするという特徴があります。それに、人との比較ではないので自分でコントロールできるのです。

 

人生を通して幸福でいたいのであれば、年収やステータスだけじゃなくて、この「非地位財」による幸福も大切にしましょうよ、というのが前野さんの提案です。

 

では、どういう心が幸せにつながるのか。もともと脳科学・ロボット研究というバックグラウンドを持つ前野さんは、因子分析という手法で、幸せには4つの因子があることを導き出しました。それが次のようなもの。

 

  • 「やってみよう!因子」(自己実現と成長の因子)

それぞれがそれぞれらしい自己実現の方法を見つけて、強みを発揮し、成長すること

 

  • 「ありがとう!因子」(つながりと感謝の因子)

ひとを喜ばせたいと思ったり、感謝をしたりすること

 

  • 「なんとかなる!因子」(前向きと楽観の因子)

ものごとをうまくいくと捉えたり、気持ちの切り替えができること

 

  • 「あなたらしく!因子」(独立とマイペースの因子)

他人に左右されなかったり、揺るぎない信念があること

 

 

皆さんはこれらの因子を持っていそうですか? この4つの因子は、全部満たしている方が幸せで、ひとつかけていると幸せが下がり、全部かけていると一番幸せじゃないそうです。4つの因子の詳しい説明はここでは書ききれないので、ぜひぜひ本を読んでみてください。

 

わかっちゃいるけど、人間だもの、にしないために

 

幸福学なんて聞くと、どこかうさんくさいイメージを持ってしまう方もいそうですが、幸福を客観的に研究した点にこの本のすごくおもしろいところ。また4つの因子以外にも、前半では現在の幸福学研究の概説みたいな部分もあるので、幸福学に関心がある方にとってもいい入門書になるはずです。

 

著者の前野さん曰く、実践に活かせる幸福学を目指して研究に取り組んできたとのこと。そう、いくら理論ができあがっても、実践されなければ絵に描いたモチになってしまうんですよね。みつをさんじゃないけれど、「人間だもの」にしないためには、この4つの因子を満たすためにどんな行動ができるか、って所まで考えることが必要で、そこらへんを引き続き考えていこうと思います。