キャリアの物語をつむぐ

働きかた編集者 山中康司のブログ

自己分析の「will・can・must」モデルと「be・can・must」モデル

自己分析はむずかしい。

 

ぼくもキャリアコンサルタントという仕事をやっていて、他人の自己分析についてはあれこれアドバイスするのだけど、自分が自己分析をしっかりできているかというと、まだしっくりきていない部分もある。

 

というのも、自分というのは変わっていくものだし、「自己分析はこれで完璧!」となることはないのだ。

 

とはいっても、その時点で自分がどういう人間なのかということは、とくに就活や転職活動をする際にきちんと把握しておくことは欠かせない。

 

そんな時に役に立つのが、自己分析の「will・can・must」モデルだ。

 

自己分析のwill・can・mustモデル

このwill・can・mustモデルはよく使われているので、もしかしたら、この3つの輪っかに見覚えがある方もいるかもしれない。

 

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「will:やりたいこと」「can:できること」「must:やらなければならないこと」が重なる部分を仕事にすると、自分がやりがいを感じながら、能力を発揮し、周りからも必要とされるという、力強いキャリアが歩める。そのため、このモデルがよく自己分析に使われている。

 

もう少し、それぞれの要素について詳しくみていってみよう。

 

will:やりたいこと

自分が大切にしている価値観や、将来こうしたいと思い描いている未来、やっていて楽しいと思える行動など。

 

やりたいことが見つからない……という方(ぼくも結構そうなのだけれど)は、幼少期にまでさかのぼって考えてみるといい。小さい頃ワクワクした経験や、憧れた人、夢中になったこと……そういったことのなかにヒントがあるはずだ。

 

can:できること

スキルやノウハウ、知識や人脈や人柄といった、自分がなにかの価値を生み出すための資源になるもの。

 

よく、TOEIC何点とかマネジメントスキルといった、「スキル」ばかり注目されがちだけれど、人脈や、「穏やか」「明るい」といった人柄も立派な資源になる。

 

『LIFESHIFT』では無形資産の重要性が指摘されていたが、まさに人脈や人柄はたいせつな無形資産だ。

 

must:やらなければならないこと

社会や会社、家族から求められていること。たとえば「子ども世代に残せる地域の環境をつくる」とか「営業担当として売上をいくらあげる」とか「家計を支えるためにいくら稼ぐ」とか。

 

「はたらく」とは「”はた(傍)”を”らく(楽)”にする」ことだと言われる。つまり、”はた(傍)”がどんなことを求めているかをしっかりと把握することができて初めて、「はたらく」ことができ、お金や信頼といった見返りを得ることができる。

 

だから、mustについてか考えることは、 willやcanを仕事に落とし込むうえでとても大切だ。

 

ここで参考までに、ぼくのwill・can・mustをのせておく。

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この3つの輪っかが重なる部分が、フリーランスで編集力を活かしながらソーシャル領域のキャリア支援・採用支援に取り組む「働きかた編集者」という仕事だった。

 

3つの話を埋めるポイント

この「will・can・must」モデルを埋めるときのポイントは、次のようなことだ。

 

・willはbeでもいい

先ほどもいったように、willをあげるのはむずかしい。というのも、なにをやりたいかは環境に左右されるのだけれど、今の時代環境はコロコロ変わるからだ。たとえば、「翻訳家になりたい」と思っても、今後翻訳家という仕事があり続けるかはわからないのである。

 

だから、やりたいことがわからない人は、「will=なにをやりたいか」よりも「be=どうありたいか」を考えると考えやすい。

 

「be=どうありたいか」は、どんな環境になってもかわらない、自分の根っこのようなものだ。たとえ自動翻訳の技術が発達して翻訳家という仕事がなくなっても、「be=どうありたいか」が「異なる背景を持つ人の橋渡しをする存在でありたい」だったら、他にも仕事の選択肢はたくさんある。

 

こんなふうに、「be=どうありたいか」が明確だと、どんな環境にもうまく自分の居場所をみつけていけるのだ。

 

ちなみにこの「be・can・must」モデルで考えてみると、ぼくはこんな感じになる。

 

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・拡散と整理の順番で取り組む

いきなり紙に向かって正解を書き出そうとすると、ペンが止まってしまう。まずは、思いつくままにバーっと書き出してみるのがいい。べつに間違ってもいいのだし、まず大事なのは、思いつくもののをたくさんあげることだ。

 

だから、作業に取り組む場所はリラックスできる場所がいい。カフェとか、図書館とか、自宅とか、自分がリラックスできる場所で取り組んでみよう。

 

一通り出し切ったと思ったら、その要素を整理してみる。共通するものがあったらまとめてグルーピングして名前をつけてみたり、その作業の中で思いつくものがあったら書き足していい。

 

・他人の視点を取り入れる

人は生まれてから死ぬまで、自分の顔を直接みることはできない。鏡や写真で見れる自分の顔は、間接的に見れるにすぎない。ことほど左様に、自分のことについて自分で知るのはむずかしいのだ。

 

ぼくも、「自分のことは自分が一番よくわかってる」と思っていたことがあったけど、他人にカウンセリングをしてもらう機会を得るようになって、それがどれだけ間違っているかをつくずく実感した。

 

だから自己分析では、他人の視点を取り入れることが不可欠だ。とくに「can」の部分は、自分では当たり前にやっていることが相手にとってはすごいことだったりする。

 

身近な友達や同僚、家族などに、自分はどんな人間か、恥ずかしいかもしれないけど聞いてみるといい。

 

・あまりでなかったら、項目が増える行動をすればいい

とくに学生のうちは、項目を出すのが難しいことがある。とくに「can」は、社会人経験を積んでいないとなかなか出せるものじゃない。

 

それは決して問題じゃない。ここでは、「自分はcanが足りないな」「willがみつからないな」としれたことが重要だ。そういったことに気づいたなら、自分のことをより深く知ったり、会社や社会のことを知ったりするための経験、キャリアカウンセリングの言葉で言うと、「啓発的経験」をつんでみよう、という意思決定ができる。学生ならインターン、社会人ならプロボノやボランティアといった選択肢があるだろう。

 

ちなみにぼくの場合、いまフリーランスで働いているのは、これらの項目を増やすためだ。フリーランスだと幅広い仕事ができるので、その分いろんな可能性を試してみることができる。『LIFESHIFT』でいう、「エクスプローラー」のキャリアだ。

 

冒頭で、ぼく自身もまだ自己分析が完璧にできているわけでないといったように、自己分析はどこかで完璧になるというものじゃなく、キャリアの節目にその都度する必要があるものだ。

 

だからこそ、こうしたモデルを知っておくことは一生役に立つはず。ぜひ、頭の片隅に置いておいてもらえると嬉しい。