キャリアの物語をつむぐ

働きかた編集者 山中康司のブログ

”働きかた編集者”とは何者か

この度国家資格キャリアコンサルタントに合格しました!!

 

いやぁ、2回目の受験だったので、どうなることかとハラハラしてたのですが、とりあえず受かっていてひと安心。これから、フリーランスとして本格的に”働きかた編集者”の仕事に取り組んで行きたいと思います。

 

”働きかた編集者”ってなんぞや?」と思われると思うので、今回はその説明を。

 

一人ひとりがキャリアをデザインする時代

 

僕がプロフィールでも名乗っている、「働きかた編集者」という肩書き。他に名乗っているひとは聞いたことがないので、おそらく今のところ世の中にひとりだけの肩書きだと思います。

 

なぜ”働きかた”で”編集者”なのか。

 

まず背景としてあるのが、現代は一人ひとりが働き方をデザインしていく時代になってきているということです。

 

かつて、年功序列・終身雇用が一般的で、雇用の流動性が低かった時代は、多くのひとが認める「こうあるべき」という生き方・働き方がありました。「東京の大企業に入って出世して郊外に一軒家を立てて男性は妻と子を養う。女性は家庭に入る。」といったものですね。

 

しかしいまでは、グローバル化やIT化、さらに少子高齢化や経済の停滞などの要因が絡まりあい、誰もが認める「こうあるべき」という生き方・働き方がなくなりつつあります。

 

一人ひとりが、自分のキャリアをデザインする時代になっているのです。

 

キャリアと”自由からの逃走”

 

「自由にキャリアを選べる時代になって、いいじゃん!」と思うかもしれません。実際、自分のキャリアをデザインできることは自分の人生の舵取りをできるということなので、働きがいや生きがいにつながることはもちろんです。

 

でも、いいことばかりかといえばそうではない、と僕は思っています。精神分析学者のエーリッヒ・フロムは、1941年に発表した『自由からの逃走』で、自由の二面性を指摘しました。確かに自由は、近代の人々が追い求めてきた理想だった。しかし、自由は他者との結びつきから切り離されることでもあるので、孤立感や不安ともなうと。

 

フロムの分析はドイツのナチズムについての研究でしたが、「自由には不安もともなう」という主張は現代の働きかたにも当てはまるのではないでしょうか。

 

つまり、確かに現代は働きかたの選択肢が多くなり、以前と比べて自由にキャリアをデザインできるようになった。

(いや、現代だって思うような仕事につけていない人はいる。若年無業者やシングルマザー、高齢者の問題を見過ごしているんじゃないか、という批判はあると思います。僕もそうした方々を仕事という領域でどのように包摂していくか、ということは考えていかないといけないと思っています。が、ここではあえてマジョリティ側に注目しています。マジョリティだからと言って解決すべき問題がないというわけではないと思うからです

 

その自由は、不安をともなうものであると思うのです。僕自身、漁師にもなれる、クリエイターにもなれる、公務員にもなれるし主夫にだってなれるかもしれないと、目の前に選択肢がずらっと並べられた時に、なにを選んだらいいのかわからない不安は日々感じていることです。

 

人生は「主演:自分、脚本:自分」の物語

 

ところで、僕は小川洋子さんと河合隼雄さんのある対談集のタイトルがすごく好きで。『生きるとは、自分の物語をつくること』というものなのですが、本当にそうだなぁと。

 

人生って、「主演:自分、脚本:自分」の物語なのですよね。その物語を悲劇にするのか喜劇にするのか、登場人物は誰にするのか、舞台はどこにするのかは、自分次第。小説や映画をつくったことがあるかたならわかるかもしれませんが、物語をいちから作っていくのってめちゃくちゃ大変なのです。ましてや自分の人生という物語は、書き直し・撮り直しはできません。その時かぎりの一発勝負。失敗したらどうしようと不安になって当然です。

 

でも、不安だからといって、自分の物語である人生の脚本を誰かに書かせてしまったら、それははたして「自分がしあわせだと思える物語=人生」なのでしょうか。僕は、そうではないんじゃないのかなと思います。

 

”働きかた編集者”がやること

 

ここまで、僕が思っている3つのことを書いてきました。

それをちょっと整理すると、次のようなことになります。

 

  • 人生は、「主演:自分、脚本:自分」の物語である。

  • 現代は、自分でキャリアをデザインすることができる時代になってきている。言い換えれば、自分つくる物語の選択肢の自由度が増えている。

  • 自分でつくる物語の選択肢の自由度が増えるほど、選択にともなう不安が大きくなる 。

 

 こうした前提があるなかで、どのように一人ひとりが、不安を乗り越えて、自分の物語を、それも本当にしあわせだと思える物語をつむいでいくか。

 

その”一人ひとりがしあわせな物語をつむぐ”ことに寄り添いたいというのが、僕が”働きかた編集者”という肩書きに込めた思いです。

 

「ソーシャルキャリアコンサルタント」とか「ワークシフトなんちゃら」とか、いろいろ考えたのですが、”働きかた編集者”がいちばんしっくりきました。”編集者”という言葉が持つ次のような3つの意味合いが、僕のやりたいことにぴったりくるような気がして。

 

  • さまざまな要素を組み合わせる存在

先に述べたように、今はいろんな要素を組み合わせて自分のキャリアを作っていく時代です。ITとか農業とかローカルとかAIとかコミュニティとかとか。その組み合わせる作業はまさに”編集”だろうなと。

  • つくり手が物語を生み出すのに寄り添う存在

編集者というのは、特に小説の編集者はわかりやすいですが、作家さんが物語をつむぐのに寄り添う、助産師さん的な存在なのですね。そうした存在は、一人ひとりが人生という物語をつむぐ時にもいたらいいんじゃないかな、そんな存在になりたいな、という思いがあります。

  • ちょっとクリエイターっぽい存在

最後は完全に好みです。「ぼく、編集者です」って言いたい。かっこいいから。ただそれだけ(笑)。

 

”働きかた編集者”が増えてもおもしろい

 

「働きかた編集者とはなんぞや」ってことを説明するために、こんなに長文が必要な時点で、あまり良い肩書きではないのかもしれない、と思い始めました(汗)。

 

でも、もしおもしろいなーとかやりたいなーとかいう物好きな方がいたら、働きかた編集者的な人がどんどん増えていったら嬉しい。少なくとも、キャリア支援に関わる存在がもっともっと身近になっていったらいいとおもいます。現状ではまだまだ、キャリア相談なんかも敷居が高いと思うので。

 

あ、最後にですが、働きかた編集者としては「キャリアコンサルティング」「編集・ライティング」「イベント運営」をやっていこうかなーと目論んでいます。長くなったので、詳しくはまたの機会に。