キャリアの物語をつむぐ

働きかた編集者 山中康司のブログ

Be→Stand→Have→Doの順番で考える「内発的キャリア選択」について

『シゴトゴト』で「仕事は人びとを幸福にするか」という連載をしています。

 

仕事と幸福の関係についていろいろな分野の専門家にインタビューしているのだけど、僕自身「なるほど」と思うことばかりで、とても勉強になる企画です。

 

そのなかで思ったことの一つが、キャリアを選択する時の、考えることの順番。それを今日はちょっと紹介してみます。

 

キャリアを考える時の補助線

 

神宮球場で野球を観戦している時に「小説家になろう」と思った村上春樹みたいに、突然のインスピレーションだったり、本田圭佑みたいに小さい頃からの夢が根っこにあったりと、キャリアを選択する時に何に基づいて考えるかは人それぞれでしょう。だけど、考えることに行き詰まったときにヒントになる、補助線みたいなものがあると、キャリアの選択は楽になるだろうと思います。

 

キャリアを考える時の補助線としては、「仕事は人びとを幸福にするか」のなかでもいくつもヒントをいただくことができました。

 

例えば成瀬まゆみさんは「『Be(どういう状態でいれば幸福なのか)→Have(そのためになにが必要なのか)→Do(そのためになにをすべきか)」という順番で考えると、行動がBeで貫かれるので、一貫性が出る』と言っています。

(「幸福を”Be→Have→Do”で考える。」成瀬まゆみさんが語る、働き方に悩んだ時にすべきこと-仕事は人びとを幸福にするかvol.4- - シゴトゴト|仕事旅行)

 

シゴトゴトの記事ではないけれど、兼松佳宏さんが言う「BEとしての肩書き・DOとしての肩書き」という考え方にも通じると思います。

(DOとしての肩書き、BEとしての肩書き | greenz.jp | ほしい未来は、つくろう。)

 

さらに、『次の時代を、先に生きる。 - まだ成長しなければ、ダメだと思っている君へ -』の著者である髙坂勝さんへのインタビュー(近日公開予定)では、必ずしも貨幣経済のなかで生きる必要はない、ということが語られます。

 

確かに世の中は貨幣経済だけでできているのではなく、自給自足経済や物々交換経済で成り立っているコミュニティもあるので、ひたすら消費と成長を目指す貨幣経済が息苦しければ、距離をおいたっていいのです。

 

Be→Stand→Have→Doの順番で考える

 

こうした考え方に触れて、あるひとつのキャリアの選択の順番があるんじゃないか、と思うようになりました。

 

それが、「Be→Stand→Have→Do」です。順番に見ていきましょう。

 

Be

自分がこうありたいと思う”あり方”のこと。”根っこ”や”価値観”と言ってもいい。

 

兼松さんや成瀬さんが言うように、どういう自分でいたら気持ちがいいか、自分を好きでいられるか、と言った問いを自分に投げかけることで探っていきます。

 

と言っても、4つのフェーズのなかで多分一番難しいのがおそらくこれ。アイデンティティに関わることなので、自分のことを深く掘り下げないといけません。その分、「Be」が見つかったら、それに紐付いて「Stand→Have→Do」は自然に出てくるかもしれないですね。

 

Stand

どこに立ち位置を取るか、ということ。もっと具体的に言えば、「貨幣経済、自給自足経済、物々交換経済、あるいはそのハイブリッド経済、どの仕組みを大事にするコミュニティにに立ち位置を取るか」ということです。

 

鯉は地上で生きられない。ライオンは深海で生きられない。それぞれの存在にはそれぞれの生きる場所があります。もし生きることに苦しさを感じたら、それは生きる場所、とっている立ち位置が間違ってるのかもしれません。

 

だとすると、例え転職をしても貨幣経済にどっぷり浸かっていたら苦しさは変わらない可能性があります。その場合、貨幣経済ではないコミュニティがある地方に移住する、という選択肢を取るのもひとつの手になるでしょう。

 

Have

何を持つのか考えるというフェーズ。髙坂さんが提唱している、「ミニマルライフコスト」のような考え方です。つまり、まず自分が望むライフスタイルを実現するには何が必要なのかを把握するのです。次に、そのモノやサービスを手に入れるにはいくら必要なのかを弾き出す。そうすると、生活に必要な「ミニマルライフコスト」がわかります。

 

髙坂さんがいうように、消費者マインドから距離を置いて、自分で農作物を作ったり必要以上のものは買わないように心がければ、以外とミニマルライフコストは少なくて済むはずです。

 

Do

その上で、初めてDo(なにを仕事にするか)を考える。「Be→Stand→Have」までは考えてあるので、自分の価値観に沿って、心地よい場所で、必要なだけ働ける仕事を選ぶことができるはず。

 

 

万能ではないけれど

 

もちろん、誰もがこうした考え方の順番を取るべきだ、ということじゃありません。一瞬のひらめきでキャリアを決めて、うまくいった人もいるし、夢を貫く人もいますよね。

 

ただ、キャリアの選択に行き詰まったときに、こうした順番で考えたら視界が開けるかもしれない、ということです。

 

特に、この考え方だとまずBe(あり方)から入り、それをベースに考えていくので、根っこがしっかりしたキャリアを作れるんじゃないかと思うんですよね。その意味で、「内発的キャリア選択のステップ」とでも言いましょうか。(いや、しかしカタいな…)

 

ただ、このアイデアはまだ実践されていないので、あくまでも「こんなのもアリかも」というもの。なので僕自身が一度、この考え方でキャリアを棚卸ししてみようかな。機会があれば、その結果もお伝えします。