キャリアの物語をつむぐ

働きかた編集者 山中康司のブログ

NPOに転職することのメリット・デメリットと、仕事の探し方

NPOで働くことに興味があるんです」という声を聞くことは少なくない。

 

僕がNPOに転職した時には、親から「なんで大学まで出てボランティアみたいな仕事をするんだ」と止められた。そのことを考えると、今の若い世代はだんだんと、NPOのようなソーシャルセクターで働くことに対する誤解とかネガティブな印象はなくなりつつあるのかもしれない。

 

一方で、「NPOで働くことに興味があるんです」の次に続く言葉は、「どうやって食べていけばいいですか?」だったりする。やっぱり、NPOは稼げないという印象は根強い。

 

じゃあ、実際にはどうなんだろう? ということで、お金の話も含めて、NPOで働くことのメリット・デメリットをまとめてみた。

 

NPOのお給料の話

さて、気になるお金の話。NPOなどで構成される新公益連盟が17年に実施した『ソーシャルセクター組織実態調査2017』と、加盟団体の平均年収は383万円。

(参考:ソーシャルセクターの給与・働き方・キャリアとは? ~新公益連盟ソーシャルセクター組織実態調査2017より~ | DRIVE - ツクルゼ、ミライ!行動系ウェブマガジン

 

おや、意外と高いな、と思ったのはぼくだけじゃないはずだ。

 

NPO全体での平均は200万円台半ばとされ、どこでもこれほどの給与があるわけじゃない。要するにピンキリですよね、というところだけれども、「NPO=食べていけない」というわけじゃないことは言えるだろう。

 

特に、日本全体の労働市場が空前の売り手市場である今、ソーシャルセクター も人材確保が大きな課題になっている。日経新聞によれば、大手転職サイトへの求人掲載数は過去3年間で3倍以上になったという。そうした中で、大規模なNPOは賃上げによって優秀な人材を仲間に入れる動きが進んでいる。

(参考:NPOも人手不足 求人数3倍超に、年収上げ人材確保 :日本経済新聞

 

 

メリット

さて、「ピンキリかもしれないけど、稼げるところではある程度稼げる」ことがわかったところで、僕が考えるNPOで働くことのメリットとデメリットをあげてみる。(あくまでも主観です)

 

まずはメリットから。

 

  • 自分のスキルを活かして社会課題を解決できるやりがい

現状、NPOで働くとめちゃくちゃ稼げる、というわけではない中で、NPOで働くことで得られる大きなものは、やはりやりがいだ。「お金をガツガツ稼ぐよりも、地域や社会のために役立つことをしたい」というタイプの方は、やりがいを感じながら働くことができる。

 

ちなみに僕がNPOに転職して感じたのは、日常会話や会議の中でも、前提になっていることが営利企業と異なること。営利企業だとどうしても「利益をどう上げるか」が前提となって話すけど、NPOだと「社会にどうインパクトを与えるか」を前提に毎日の話がなされていた。

 

もちろんNPOにとっても利益を上げることは大事なのだけど、何を目的とし、何を手段にしているのかが異なるのだ。利益ではなく社会へのインパクトを目的に話ができる環境は、僕にとって心地よかった。

 

  • 無形資産としての人的ネットワークを築ける

『LIFESHIFT』や『お金2.0』でも述べられているように、人との繋がり、人的ネットワークは、個人にとってとても貴重な無形資産になる。

 

その点NPOは、人的ネットワークを築きやすい印象がある。取り組みが共感を生みやすいからだ。一方で、そのネットワークが内輪、つまりNPO界隈だけのものになってしまわないように注意は必要かもしれない。

 

  • 多様な働き方が可能

『ソーシャルセクター組織実態調査2017』によると、NPOは多様な働き方を可能にする制度が、営利企業に比べて整っているという。

 

「在宅勤務を含むリモートワーク」を導入しているのは、一般企業が11%であるのに比して、NPOは64%「雇用形態の一時的な移行」および「週の出勤日の短縮」の施策の導入もそれぞれ48%、「ワークシェアリング」の導入も24%の組織が取り組んでいるという。

(参考:ソーシャルセクターの給与・働き方・キャリアとは? ~新公益連盟ソーシャルセクター組織実態調査2017より~ | DRIVE - ツクルゼ、ミライ!行動系ウェブマガジン)

 

繰り返しになるけれど、あくまでもこの調査に回答した組織の結果なのでこれをもって「NPOはこうだ」とはいいにくいが、それでも僕の実感としても、確かに柔軟な働き方は認められているように思う。

 

  • 独り立ちしやすい

これは、NPOだからというより、組織規模の問題なのかもしれない。多くのベンチャーにみられるように、規模がまだ大きくないNPOでは、入ってすぐに権限をもって仕事を任される。だから、早くから経験を積むことができ、スキルが身につきやすい。

 

一方で、基本OJTで、しっかりした研修があるわけではないところが多いから、「ちゃんと教えて欲しい」という方には難しい環境のNPOは多いかもしれない。

 

デメリット

 

一方のデメリットはというと、次のようなもの。

 

  • 福利厚生や給与水準は低め

NPOの給与は思ったよりも低くない…ところもあるものの、やはり営利企業、特に大企業と比べれば多くの組織が低いのが実際だろう。それに、社会保険も最低限しか整っておらず、福利厚生もあまりないところが多い。

 

  • やりがい搾取のような状況に陥りがち

この問題は非常に難しい。やりがい搾取とは、

 

労働者が、金銭による報酬の代わりに“やりがい”という報酬を強く意識させられることで、賃金抑制が常態化したり、無償の長時間労働が奨励されたりする働きすぎの組織風土に取り込まれ、自覚のないまま労働を搾取されている状態」(引用:「やりがい搾取」とは? - 『日本の人事部』

 

ということ。どうしても、賃金よりもやりがいを求めてジョインすることが多いので、賃金抑制や長時間労働、働きすぎの状態には陥りやすい印象がある。マネジメント側も個人も「やりたくてやってるんだからいいだろう」という考えになりがちだが、それで心身ともに疲弊しているNPO職員は少なくない。

 

  • ビジネスの常識が通用しないことがある

現状、ビジネス領域からソーシャル領域への人材移動はそれほど活発ではないので、NPOでもビジネスの常識が通用しないことがある。マーケティングやデザイン、テクノロジー、マネジメントといった分野で、ビジネス領域で経験を積んだ人材はNPOでもとても求められているが、組織によっては「入ってみたら、話が通じなかった…」ということも起こりうるだろう。

 

だからこそ、ビジネススキルを活かして組織内でイノベーションを起こせる可能性も高いのだけれど。

 

  • 転職後のリアリティショックが起こりがち

リアリティショックとは、「入ってみたら、思っていたのと違った…」という、転職や就職の時によくあるショックのこと。NPOは理念に共感して、夢を持ってジョインする人が多い一方で、実務は結構地味だったりする。その理想と現実のギャップにショックを受ける人は少なくないだろう。

 

  • 周囲の理解がないことがある

僕の親じゃないけれど、「NPOはボランティアなんだろう」と思っている人はまだまだいる。友達とか知り合いとか、ソーシャル領域以外の方と話すと、まず「いや、NPOはですね…」というところから始めなきゃいけない場合もあるので、しんどいといえばしんどい。

 

あと、単純に合コンとかでモテなくなる、ということもあるかもしれない。(僕は全然行かないけど)

 

必ずしも転職しなくてもいい

 

NPOに転職することのメリット・デメリットをざっと挙げてみた。

 

最後に、そもそもだけど、NPOに転職することを考えている方は、「そもそも転職すべきなのか?」を立ち止まって考えてみてもいいと思う。

 

必ずしも、正規スタッフとしてジョインするというカタチでなくともNPOに関われる選択肢はある。プロボノや、社会人インターン、副業(複業)、あるいは自分で立ち上げる、今の組織の中でCSRなどでNPOとコラボする、など。

 

収入や福利厚生が気になるという方は、まずはプロボノや副業で関わるというのもアリ。ぜひ、自分なりのNPOとの関わり方を見つけてみてください!