キャリアの物語をつむぐ

働きかた編集者 山中康司のブログ

境界ないキャリアを支える、「流動創生」というコンセプト

人口減少が進み、全国区の自治体で移住者を呼び込む取り組みが盛んに行われています。そんななか、必ずしも移住を前提とせず、流動人口(一時的にある場所に滞在している人口のこと)を増やすことにより、一人ひとりが最大の価値を生み出すような地域の取り組みがあります。

 

それが、福井県南越前町で取り組まれている「流動創生」の取り組み。そんなユニークな取り組みについてのトークイベントが都内で開催されるというので、足を運んでみました。

ryudou-sousei.jp

 

流動創生とは

 

流動創生とは、どういうことなのでしょうか。

サイトでは、次のように説明されています。

 

 これからの時代に、本当に価値あることを、本当に価値となる場所で生み出していくためには、常識や固定観念に左右されず、一人ひとりがすべきこと・いるべき場所・あるべき姿を求めて縦横無尽に動くこと、そしてそれを可能とする「流動性の高い環境」が必要です。


流動創生は、組織や個人の流動性を高めることにより、一人ひとりが最大の価値を生み出すことのできる「一億総適材適所」社会を目指します。 

(引用:About - 流動創生? - | 流動創生

 

日本全体で人口が減っているなか、各地域が移住者の奪い合いをすることは、どこかが生き残ってどこかが衰退してしまうことにつながります。一方で、流動人口を増やすことができれば、人口の奪い合いになることなく、さらにはそれまで地域内にはなかった新しい視点が地域に持ち込まれるというメリットもあります。

 

また、個人としても、価値観が多様化している今、一つの地域にとらわれない生き方をしたいという方も増えているでしょう。

 

「流動創生」はそうした時流を捉えた取り組みで、具体的には「StopOver」と、「RoundTrip」という取り組みをしているそう。

 

「StopOver」は、次のようなもの。

 

福井県南越前町流動創生拠点に滞在して地域の人々の暮らしや生業に寄り添い、地方を絡めた多拠点のあり方について具体的に理解を深めながら、「風の人」と「土の人」のギブアンドテイク構築を学ぶ合宿企画

(引用:About - 流動創生? - | 流動創生) 

 

RoundTrip」は、次のようなものだそう。(『あいのり』のラブワゴンみたいなイメージ)

 

全国各地を巡って地域の人々の暮らしや生業に触れ、地方を含む多拠点を俯瞰的にとらえながら、「風の人」としてのスキルを習得し、自分にあった「流動的なライフスタイル」を模索する旅の企画です。

(引用:About - 流動創生? - | 流動創生

 

こうした取り組みを通じて、地域間を移動する「風の人」がもたらす情報や技術が、地域に定住している「土の人」の力と結びつき、まったく新しい価値を生み出すことがあると、流動創生の仕掛け人で荒木幸子さんは語ります。(「風の人」と「土の人」という表現がすごくいい!)

 

境界なく生きる時代

 

キャリア論では、「バウンダリーレス・キャリア」と呼ばれるような、企業や職種、業界などを超えた、「境界(バウンダリー)」のない生き方・働き方が一般的になっていると言われます。

 

流動創生の取り組みも、そうした文脈のなかに位置付けられるでしょう。企業や職種、業界などを境界なくわたり歩くことが可能になるからこそ、働く場所・住む場所についても境界なく流動しながら生きることができるようになってきた。

 

そういう意味では、人口の流動を促す流動創生の取り組みは、南越前町だけでなくこれから他の地域にも広がっていくのではないでしょうか。