【読書録】『あなたが世界のためにできるたったひとつのこと<効果的な利他主義>のすすめ』ピーター・シンガー著 関美和訳
取材のための資料として読んだ『あなたが世界のためにできるたったひとつのこと<効果的な利他主義>のすすめ』が、思いがけずとても刺激的だったので、かんたんにまとめてみます。
ざっくりまとめると
効果的な利他主義とは
・一般的に「科学的根拠と理性を使って、もっとも効果的に世界をよりより場所にする哲学と社会的ムーブメント」だと言われている(15頁)
・情けに訴えかけるチャリティではなく、費用対効果の高い方法でいのちを救い苦痛を減らすことを証明できるチャリティに寄付を行う(101頁)
・功利主義をチャリティに当てはめたバージョン
・いちばん大きいインパクトを与えることを目指す(232頁)
・チャリティを情緒でなく数字で捉える(232頁)
効果的な利他主義の例
・質素に暮らし、収入の大部分をもっとも効果のあるチャリティに寄付する
・どのチャリティがもっとも効果的かを調査、議論、または調査を参考にする
・<たくさんのいいこと>ができるように、いちばん収入が大きいキャリアを選ぶ(
・身体の一部を他人に提供する
・その他の倫理的なキャリア(旗ふり役・官僚・研究者・社会起業家や活動家)
効果的な利他主義に共通する<いちばんたくさんのいいこと>という価値観
ほかのことがすべておなじなら、より苦しみが少なくより幸福な世界を目指す
効果的な利他主義を動かすのは共感ではなく理性
・自分の「傾向や好みや愛情」から独立した視点で、自身の生き方を評価する。(114頁)
・効果的な利他主義者は特定の人を助けるよりも自分が助けられる人の数に興味を持つ(118頁)
・理性は感情をコントロールすることで倫理的な行動に欠かせない役目をはたす(115頁)
気づいたこと
以上、ざっくり『あなたが世界のためにできるたったひとつのこと<効果的な利他主義>のすすめ』をまとめてみました。
功利主義を社会貢献にあてはめた「効果的な利他主義」が、欧米ではムーブメントになりつつあると。ただ思うのは、そもそもチャリティの文化が希薄と言われる日本で、「効果的な利他主義」は受け入れられるのかということです。
また、いまはクラウドファンディングのプラットフォームがあるように、その土壌はありつつ、さまざまなソーシャルビジネスや社会的な取り組みを数字で評価する指標はあまりないのかも。指標は「効果的な利他主義」の大前提なので、そこをきちっとつくることが大切になってくるのでは、思いました。